神戸三宮の心療内科・精神科仕事とこころのクリニック
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KOKORO NO SHIKUMI 01

「ちゃんとしなきゃ」と頑張りすぎる人へ

こころの仕組み

こころの仕組み01

「もう少し力を抜いていいんじゃないですか」

そう言われても、力を抜けない人がいます。

仕事はきちんとやる。
人に迷惑をかけない。
約束は守る。
頼まれたことは断らない。
つらくても、できるところまでは自分でやる。

周りから見れば、「真面目な人」「責任感の強い人」です。

本人も、それが自分の性格なのだと思っています。

「休んでいい」と言われても休めない

少し不思議なことがあります。

体調を崩しても休めない。
周囲から「休んでいい」と言われても休めない。
仕事が終わっているのに、何度も確認する。
人に頼めば済むことまで、一人で抱え込む。

これは単に「真面目だから」なのでしょうか。

もしかすると、その人の中には、

「ちゃんとできない自分ではいけない」

という、もう少し強いルールがあるのかもしれません。

「人に迷惑をかけてはいけない」

「できないと言ってはいけない」

「一度引き受けたことは最後までやるべきだ」

「このくらいで休むのは甘えだ」

こうしたルールを、毎回頭の中で文章として考えているわけではありません。

本人にとってはあまりにも当然なので、「どうしてそこまで頑張るんですか?」と聞かれても、「普通じゃないですか?」となることがあります。

しかし、その「普通」の中に、その人が長い時間をかけて身につけてきた生き方が隠れていることがあります。

高い目標を持つことと、失敗を許せないことは違う

心理学の研究では、完璧主義を一つの性質としてではなく、いくつかの側面に分けて考えます。

代表的なのが、次の二つです。

  • 高い目標を設定し、達成しようとする側面
  • 失敗を過度に心配し、自分を厳しく評価する側面

高い目標を持つこと自体が、必ずしも問題なのではありません。仕事を丁寧にすることや、責任を持って取り組むことは、その人の強みにもなります。

一方で、ミスをすると自分の価値まで失われたように感じる、周囲から否定されることを強く恐れる、十分にできていても安心できない、休むことを「失敗」や「甘え」と感じる、といった側面が強くなると、負担が大きくなります。

つまり、問題は「一生懸命であること」そのものではありません。

失敗しないことが、自分の価値や安心を守るための絶対条件になっていることが、苦しさにつながる場合があります。

「ちゃんとしなきゃ」は自分を守ってきた

こうしたルールは、必ずしも悪いものではありません。むしろ、これまでその人を守ってきたことがあります。

失敗しないよう何度も確認したから、仕事で評価された。

人に迷惑をかけないよう頑張ったから、信頼された。

弱音を吐かず努力したから、苦しい時期を乗り越えられた。

人より準備したから、人と同じところまで行けた。

つまり、

「ちゃんとしなきゃ」は、その人なりに社会の中で生きていくための方法だった

のかもしれません。

診察でも、真面目さや責任感によって、長い間仕事や生活を支えてきた方にお会いします。

周囲からは問題なく働けているように見えても、本人は人知れず残業、予習、確認を重ね、ようやく同じ場所に立っていたということがあります。

その方法で実際に評価されてきたからこそ、簡単には手放せません。

「頑張るのをやめましょう」「もっと適当でいいですよ」と言われても、それでは自分を守れないように感じるのです。

同じルールが自分を苦しめるとき

問題は、「ちゃんとしよう」と思うことではありません。

どんな状態でも、同じルールを適用し続けることです。

元気な時なら、「最後まで責任を持つ」でよいかもしれません。

しかし、眠れなくなり、食べられなくなり、朝になると涙が出る状態でも、「最後まで責任を持つ」を適用すると、身体の方が先に止まります。

「人に迷惑をかけない」も同じです。できる範囲で周囲に配慮することは大切です。

しかし、「自分が壊れてでも、人に負担をかけてはいけない」まで行くと、そのルールはもう自分を守ってくれていません。

もともとの性格、職場環境、睡眠不足、身体状態、人間関係など、複数の要因が影響します。研究で示されるのは集団としての関連であり、一人ひとりに同じ理由が当てはまるわけではありません。

真面目さを捨てずに、ルールへ例外を作る

必要なのは、真面目さを捨てることではありません。

ルールに例外を作ることです。

「基本的には責任を持つ。でも、健康を損ねる時は別」

「できることは自分でする。でも、一人では難しい時は頼る」

「ミスは減らす。でも、ゼロにするために自分を消耗させない」

「約束は守る。でも、体調が悪い時は相談して変更する」

そんなふうに、絶対だったルールを少しだけ柔らかくします。これは、無責任になることではありません。状況に応じてルールを調整できるようになることです。

認知行動療法では、こうした考え方や行動のパターンを整理し、「完璧にできなかった場合、実際には何が起こるのか」「他人に頼った場合、本当に信頼を失うのか」「確認を一度減らした場合、どのような結果になるのか」といったことを、小さな範囲で確かめていく方法があります。

すべての人に同じ方法が適しているわけではありませんが、長く使ってきたルールは、少しずつ見直せる可能性があります。

回復は「以前の自分に戻ること」だけではない

回復というと、「以前の自分に戻ること」だと思われがちです。

しかし、以前の自分が無理をすることで成立していたのであれば、完全に元へ戻ることが最善とは限りません。

これまで頑張れたことを否定する必要もありません。

「あの時の自分には、このやり方が必要だった」

それでよいのだと思います。

そのうえで、ときどき考えてみてください。

「このルールは、今の自分も守ってくれているだろうか。それとも、今は自分を苦しめる側に回っているだろうか」

変える必要があるのは、あなた自身ではなく、長い間使ってきた「やり方」の一部なのかもしれません。

一人で頑張り続けることが難しくなったら

次のような状態が続いている場合は、「まだ頑張れるか」だけで判断せず、医療機関へ相談することも選択肢の一つです。

  • 眠れない、または夜中や早朝に目が覚める
  • 食欲が落ちている
  • 朝になると涙が出る
  • 仕事へ行こうとすると動悸や吐き気がする
  • 休日も仕事の確認がやめられない
  • ミスへの不安で仕事に時間がかかりすぎる
  • 仕事以外のことがほとんどできなくなっている
  • 「休みたい」と思っていても自分では休めない

これらの症状だけで特定の病気と決まるわけではありません。現在の症状だけでなく、仕事、生活、睡眠、身体の状態を含めて整理することが大切です。

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参考文献

  1. Hill AP, Curran T. Multidimensional Perfectionism and Burnout: A Meta-Analysis. Pers Soc Psychol Rev. 2016;20(3):269-288.
  2. Limburg K, et al. The Relationship Between Perfectionism and Psychopathology: A Meta-Analysis. J Clin Psychol. 2017;73(10):1301-1326.
  3. Galloway R, et al. The efficacy of randomised controlled trials of cognitive behaviour therapy for perfectionism: a systematic review and meta-analysis. Cogn Behav Ther. 2022;51(2):170-184.
  4. Riley C, et al. A randomised controlled trial of cognitive-behaviour therapy for clinical perfectionism: A preliminary study. Behav Res Ther. 2007;45(9):2221-2231.
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