SNSやインターネット上で、
「退職するだけで数百万円」
「退職給付金を最大限受け取れるようサポートします」
といった広告を見かけることがあります。
退職後の生活費が不安な時、使える制度を知ることは大切です。ただし、広告でいう「退職給付金」は、一つの公的制度の正式名称ではありません。
最初に結論多くの場合、「退職給付金」とまとめて呼ばれているのは、以前からある健康保険の傷病手当金、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)、または関連する手続きです。
会社の就業規則に基づく退職一時金や企業年金を「退職給付」と呼ぶ場合もあります。会社から支払われる退職金と、公的な傷病手当金・雇用保険は分けて確認する必要があります。
不眠、気分の落ち込み、不安などで実際に仕事を続けることが難しい方は、民間業者を介さず当院へ直接相談できます。診療と医学書類については「当院が行うサポート」でご案内します。
「退職給付金」という名前だけでは、制度が分からない
広告を見る時は、まず「正式な制度名は何か」「どこが審査するのか」を確認します。民間業者が独自の公的給付を用意しているわけではありません。
健康保険の傷病手当金
病気やけがの療養で仕事に就けず、給与を十分に受けられない期間を支える制度です。
基本手当(失業保険)
働く意思と能力があり、求職活動をしているものの就職できない方を支える制度です。
会社の退職金・企業年金
会社の就業規則、退職金規程、企業年金の規約などに基づく別の仕組みです。
同じ「退職後にもらえるお金」であっても、対象となる状態、申請先、審査基準は違います。「合計でいくら」と先に考えるより、今の自分は働けないのか、働ける状態で求職しているのかを分けることが重要です。
退職後の傷病手当金は、誰でも新しく申請できる制度ではない
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがの療養のため仕事に就けず、十分な給与を受けられない場合の生活保障です。連続する3日間の待期を経た後、4日目以降の労務不能日が対象となり、支給期間は支給開始日から通算して最長1年6か月です。[2][3][6]
退職後も残りの期間について継続給付を受けられることがありますが、主に次の条件を満たす必要があります。
退職日までに、継続して1年以上の被保険者期間がある
任意継続や国民健康保険の加入期間は、この1年の計算には含まれません。加入履歴は保険者へ確認します。
退職日時点で受給中、または受給できる状態にある
退職前に待期などの条件を満たしていることが必要です。退職日に実際に出勤すると、退職後の継続給付を受けられません。
退職後も、同じ傷病により仕事に就けない状態が続いている
通院していることだけではなく、病気のため労務不能であることが前提です。
協会けんぽも、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、資格喪失時に受給中または受給条件を満たしていることを、退職後の継続給付の条件として示しています。[3]
失業保険は、「今すぐ働ける人」の制度
一般に失業保険と呼ばれる雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない方を対象とします。
そのため、病気で今すぐには働けない時期に、基本手当を受けながら療養する、という組み立てにはなりません。通院していても働ける状態なら対象になり得ますが、通院そのものが受給条件になるわけではありません。
病気やけがで30日以上働けない状態が続く場合は、基本手当の受給期間を延長できることがあります。これは給付日数や金額を増やす手続きではなく、回復して求職できるようになるまで受給できる時期を先へ延ばす手続きです。原則1年の受給期間に、働けない期間を最長3年間加えられます。[4][5]
まだ働けない
条件を満たせば健康保険の傷病手当金を継続し、ハローワークでは受給期間延長を確認します。
治療を続けて回復する
睡眠、気分、集中力、生活リズム、仕事に必要な機能を診察で確認します。
求職できる状態になる
ハローワークで基本手当の手続きを進めます。必要な医学書類があれば診察時にご相談ください。
「傷病手当金」と「傷病手当」は別の制度
名称が似ているため、ここは特に混同しやすいところです。
雇用保険の傷病手当は、基本手当の受給資格者が求職申込みをした後に、15日以上働けなくなった場合の制度です。30日以上働けない場合には、傷病手当を受ける方法と、受給期間を延長して回復後に基本手当を受ける方法を確認します。[4]
健康保険の傷病手当金と、働けることを前提とする基本手当は、同じ時期に両方を受ける前提の制度ではありません。類似する給付との調整もあるため、加入していた健康保険とハローワークの双方へ、現在受けている給付を正確に伝えてください。
退職給付金の業者との契約は、慎重に判断してください
すべての民間サポートが不適切とは限りません。しかし、契約を急ぐ必要はありません。国民生活センターには、失業保険の給付額などを増やせるとうたうサポートについて、相談が増えています。
相談件数は2021年度の42件から2024年度には217件へ増え、2025年度も10月末までに216件が登録されました。受給額が説明どおりにならない、高額な違約金を請求された、メンタル不調がないのに指定クリニックの受診を勧められた、診断のためのマニュアルが送られてきた、といった事例が公表されています。[1]
「誰でも受け取れる」「必ず受給できる」と保証する
契約すれば給付額や期間そのものを増やせると説明する
正式な制度名や受給条件、審査する機関を説明しない
手数料や解約時の違約金が高額、または計算方法が分かりにくい
症状を誇張したり、事実と異なる説明をしたりするよう勧める
特定の診断を得る目的で、受け答えの方法を指示する
事実と異なる内容で申請すると、業者の指示であっても、申請した本人が不正受給の責任を問われる可能性があります。国民生活センターも、給付は行政機関の審査で決まり、事実ではない申請には絶対に応じないよう注意を呼びかけています。[1]
契約前に、いったん持ち帰って検討してください。担当者の資格、支援する業務の範囲、費用総額、成功報酬の計算方法、解約条件、違約金を、口頭説明だけでなく書面で確認します。不明点が残るうちは契約せず、健康保険、ハローワーク、医療機関など公的制度に直接関わる窓口へ先に相談する方が安全です。すでに契約して解約や返金で困っている場合は、消費者ホットライン188へ相談できます。
当院が行う、退職後の傷病手当金・失業保険のサポート
当院では、書類だけを切り離して考えるのではなく、症状と診療経過、今の就労能力を確認しながら、退職後の生活と次の仕事までを医学面から支援します。
退職後も治療を続けます
退職によってストレス源が減っても、睡眠、気分、不安、意欲がすぐ回復するとは限りません。保険診療で経過を確認し、薬物療法や生活調整を行います。
傷病手当金支給申請書へ対応します
実際の診察と記録に基づき、医師が労務不能と判断できる期間について、療養担当者記入用を作成します。退職後の継続申請もご相談いただけます。
ハローワークの医学書類を確認します
受給期間延長、病気による離職、就労可能性などについて医師の証明を求められた場合は、渡された用紙を診察時にお持ちください。
働ける時期を一緒に見極めます
「給付を切らしたくないから働けない」「早く申請したいから働ける」と結論を先に決めず、現在の機能と再発リスクから次の段階を判断します。
民間業者を通す必要はありません
ご本人から直接受診できます。業者に指定された説明ではなく、実際の症状、経過、仕事内容、困っていることをそのままお話しください。
退職前からの経過が重要です
すでに休んでいる方、退職を考えている方は早めに受診してください。受診していない過去の期間を、後から証明できない場合があります。
退職前後に確認する順番
退職前に受診し、今の状態を確認する
すでに仕事に就けない状態なら、傷病手当金の待期、退職日、受診記録が関係します。加入する健康保険にも事前に確認します。
まだ働けないなら、傷病手当金と受給期間延長を確認する
健康保険の継続給付は以前の保険者へ、雇用保険の受給期間延長は住所地を管轄するハローワークへ相談します。
療養中も定期的に受診する
症状、生活、治療、労務不能性を継続して確認します。申請期間が経過した後、必要書類を診察時にご依頼ください。
働けるまで回復したら、基本手当の手続きへ進む
受給期間を延長していた方は、その終了手続きを含めてハローワークへ確認します。
よくある質問
Q退職給付金サポート業者は、すべて詐欺ですか?
すべての事業者を一律に詐欺とは判断できません。ただし、「必ず受給できる」「契約すれば給付額を増やせる」といった説明や、高額な成功報酬・違約金には注意が必要です。正式な制度名、支援内容、費用総額、解約条件を契約前に書面で確認してください。
Q退職給付金の手続きは、自分でできますか?
傷病手当金や失業保険は公的制度であり、加入していた健康保険やハローワークへ本人が直接相談・申請できます。医学的な証明が必要な場合は、実際に診療を受けている医療機関へ指定の用紙をご相談ください。
Q業者と契約してしまい、解約や返金で困った場合はどうすればよいですか?
契約書、広告、メッセージ、支払記録などを保存し、消費者ホットライン188へ相談してください。クーリング・オフや解約の可否は契約方法や内容によって異なるため、自己判断で決めつけず個別に確認することが大切です。
Q退職後に初めて受診しても、傷病手当金を申請できますか?
退職後の継続給付には、退職日時点ですでに傷病手当金を受給しているか、受給できる状態であることなどの条件があります。退職後の初診では退職日時点の状態をさかのぼって証明できない場合があるため、加入していた健康保険と医療機関へ早めにご相談ください。
Q退職日に有給休暇を使っても大丈夫ですか?
有給休暇や公休日で休んでいることは、実際に出勤することとは異なります。退職日に出勤すると継続給付の条件を満たさないため、退職日の扱いは事前に勤務先と健康保険者へ確認してください。
Q傷病手当金を受けながら失業保険も受け取れますか?
健康保険の傷病手当金は働けない状態、雇用保険の基本手当は働ける状態で求職していることが前提です。同じ期間に両方を受ける前提ではありません。まだ働けない場合は受給期間延長を確認し、回復後に基本手当へ移る流れを検討します。
Q当院へ行けば、希望どおりの診断書を書いてもらえますか?
ご希望は伺いますが、診断名、療養期間、労務不能性、就労可能性は診察と診療記録に基づいて医師が判断します。希望どおりの書類発行や給付を保証するものではありません。
Q失業保険の手続きを当院が代行してくれますか?
当院は、診療と必要な医学書類の作成を担当します。申請手続き、受給資格、金額や期間の確認はハローワークで行ってください。用紙を渡された場合は、そのまま診察時にお持ちください。
まとめ――給付の前に、「今は働ける状態か」を整理する
広告で使われる「退職給付金」は、退職者全員へ一律に支給される新しい給付金ではなく、多くは傷病手当金や雇用保険など、もともとある制度をまとめた呼び方です。
まだ働けない時期は、条件を満たせば健康保険の傷病手当金を継続し、雇用保険では受給期間延長を確認します。回復して求職できる状態になった後に、基本手当の手続きへ進みます。
当院では、退職後も治療を続け、傷病手当金や失業保険に必要な医学書類を、実際の病状と診療経過に基づいて作成しています。「今だけ」「すぐに契約」と急かされても、その場で申し込まず、まずは加入していた健康保険、ハローワーク、そして医療機関へ直接ご相談ください。退職給付金の業者との契約は、できるだけ慎重に判断してください。
関連するページ
参考資料
- 国民生活センター.失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意――不正受給を促すかのようなケースも!.2025年12月3日.国民生活センター
- 全国健康保険協会.傷病手当金.協会けんぽ
- 全国健康保険協会.傷病手当金について・よくあるご質問(資格喪失後の継続給付を含む).協会けんぽ
- 厚生労働省・ハローワークインターネットサービス.基本手当について(受給期間延長・傷病手当を含む).ハローワーク
- 兵庫労働局.受給期間の延長申請について.兵庫労働局
- 厚生労働省.健康保険の傷病手当金の支給期間の通算化.厚生労働省
制度内容は2026年9月22日時点で確認しています。本記事は一般的な制度・医学情報の提供を目的としており、個別の受給可否、法律上の判断、申請代行を行うものではありません。実際の要件と必要書類は、加入していた健康保険、住所地を管轄するハローワーク、必要に応じて社会保険労務士などへご確認ください。

