院長コラム
私は精神科医として診療を行う一方で、産業医として、休職や復職に関する診断書を確認する機会があります。
主治医が作成した診断書を、会社側の立場から読む。この経験を重ねる中で、診断書は「医学的な内容が正しければそれでよい」というものではないと感じるようになりました。
もちろん、診断書を書く医師は、目の前の患者さんのことを考えて記載しています。ただ、その診断書が会社に提出された後、どのように読まれ、どのような判断に使われるのかまで考えると、言葉の選び方は意外と難しいものです。
時には、「患者さんのためを思って書かれたのだろうけれど、この表現は、会社側では少し違った受け取られ方をするかもしれない」と感じることもあります。
個別の内容を書くことは控えますが、診断書に記載された一文によって、会社側が判断できること、逆に判断しにくくなることがあります。
診断書は、提出した後からが大切です
休職の診断書であれば、会社はその内容をもとに休職手続きを進めます。復職の診断書であれば、人事担当者や上司、産業医などが内容を確認し、実際に復職できる状態なのか、勤務上の配慮が必要なのかを検討します。
つまり、診断書は患者さんと主治医だけの間で完結する書類ではありません。
これは、産業医として診断書を見る立場になって、より強く感じるようになったことです。
患者さんの希望をそのまま書くことが、必ずしも患者さんのためになるとは限りません
診察では、「こういう配慮を書いてほしい」「この条件で復職できると書いてほしい」と希望されることもあります。患者さんがそう希望される背景はよく分かります。できるだけ安心して働きたい、同じような体調悪化を繰り返したくない、という思いがあるからです。
ただ、診断書は要望書ではありません。医師が医学的に必要と判断した内容を、職場側が理解しやすい形で伝える文書です。
患者さんの希望をそのまま文章にすることで、かえって会社側が対応に困ったり、復職の判断が難しくなったりすることもあります。
診断書を書く際には、この視点が大切だと思っています。
休職と復職では、診断書の役割も違います
仕事から離れて療養する必要があるか
現在の症状や仕事への影響をもとに、休養の必要性を医学的に判断します。
仕事へ戻る準備がどこまで整っているか
生活リズム、通勤、集中力、疲労、業務負荷への耐性などを確認します。
休職する時には、まず仕事から離れて療養することが必要なのかを医学的に判断します。
一方、復職する時には、生活リズムが整っているか、通勤できる状態か、一定時間集中できるか、仕事による負荷に耐えられる程度まで回復しているか、といった点も考える必要があります。
さらに、職場で配慮が必要な場合には、その内容をどこまで診断書に記載するのかも重要です。細かく書けばよいとは限りません。逆に「配慮をお願いします」とだけ書いても、会社側としては何をすればよいのか分からないことがあります。
医学的な状態と、職場で実際に可能な対応。その間をつなぐことも、休職・復職に関する診断書の役割だと思います。
休職を考えて心療内科を選ぶときに
体調が悪い時には、「すぐ診断書を書いてもらえるクリニック」を探したくなることもあると思います。もちろん、早く休養に入ることが必要な場合もあります。
ただ、休職は診断書を受け取ったところで終わりではありません。その後には療養期間があり、傷病手当金などの手続きがあり、そしていずれ復職について考える時期がやってきます。
そのため、休職を考えて心療内科や精神科を選ぶ際には、「診断書を書いてもらえるか」だけでなく、「その診断書が会社でどのように使われるかまで考えてくれる医師か」という視点も持っていただくとよいと思います。
産業医の経験がある医師でなければならない、という意味ではありません。ただ、仕事をしている方を多く診療しており、休職から復職までの流れを理解している医師であれば、診断書についても、実際の職場を意識した相談がしやすいと思います。
診断書は、会社と医療をつなぐもの
休職の診断書は「会社を休むための紙」。復職の診断書は「仕事に戻るための紙」。そう考えられがちですが、本来はもう少し重要な役割があります。
患者さんの現在の状態を医療側から職場へ伝え、治療と仕事をどのようにつないでいくかを考えるための文書でもあります。
私自身、主治医として診断書を書く立場と、産業医として診断書を読む立場の両方を経験しています。
これは、休職や復職の診断書を作成するうえで、とても大切なことだと考えています。
これから休職を考えている方、あるいは復職に向けて準備している方には、診断書の発行そのものだけではなく、その先の働き方まで一緒に考えてくれる医療機関を選んでいただければと思います。
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本記事は一般的な情報提供を目的としています。診断書の内容、休職・復職の判断、会社側の手続きは、症状、仕事内容、就業規則、勤務先の体制によって異なります。個別の状況は、主治医、勤務先の人事・労務担当者、産業医等へご確認ください。

