DIRECTOR'S JOURNAL

抗うつ薬で太るのはなぜ?――太りやすさの違いと体重増加への対処

コラム

気分は少し落ち着いてきた。でも、食欲が増え、体重計に乗るのが怖くなった。「薬を続けたら、もっと太るのでは」と不安になる。

副作用かもしれないと思っても、診察では何から話せばよいか分からず、そのままにしてしまうことがあります。反対に、不安になって急に薬をやめると、中止症状や病状の再燃が起こることもあります。

この記事では、抗うつ薬で太るのはなぜ?――太りやすさの違いと体重増加への対処について、薬の影響と別の原因をどう分けるか、経過をどう見ればよいか、どのような時に早めの相談が必要かを整理します。

抗うつ薬による体重変化は、薬の作用だけでなく、食欲の回復、間食、睡眠、活動量、うつ病からの回復が重なって起こります。平均的な差はありますが、薬の名前だけで一人ひとりの変化を予測することはできません。

どのような変化が起こることがありますか

食欲と食べ方

空腹感が強くなる、甘い物や夜食が増える、食事量が戻るなど、体重より先に変わることがあります。

活動量と睡眠

眠気で動く時間が減る場合もあれば、うつ病が改善して食事と睡眠が戻る過程で体重が回復する場合もあります。

身体の変化

便秘、むくみ、月経、甲状腺機能、加齢など、薬以外の要因が重なることもあります。

薬の副作用だけで説明しないことも大切です

「薬を始めた後に増えた」という時間関係は大切ですが、それだけで原因は確定しません。うつ病になる前の体重、治療開始時の食欲低下、睡眠、飲酒、他の薬、甲状腺や糖代謝なども確認します。短期間のむくみと、数か月かけた脂肪量の増加も分けて考えます。

いつから起こり、いつまで続きますか

食欲や間食は開始後早い時期に変わることがあり、体重は数週から数か月の経過で見えてきます。最初の1回の測定で判断せず、同じ条件で週1回程度を目安に記録すると傾向をつかみやすくなります。毎日の増減が不安を強める方は、測定頻度を主治医と相談します。

薬による違いはありますが、順位だけでは選べません

18万人を超える診療データを用いた2024年の研究では、セルトラリンと比べた6か月後の平均体重差は、エスシタロプラムで0.41kg、パロキセチンで0.37kg、デュロキセチンで0.34kg多いなど、薬剤間に小さな差が示されました。ただし観察研究であり、服薬継続率や体重測定の欠測という限界があります。個人差は平均差より大きくなり得ます。ミルタザピンでは、食欲増加と体重増加が臨床上の重要な負担になりやすいため、開始前から確認します。

診察までに確認しておきたいこと

  1. 01開始前の体重と、可能なら腹囲を記録する
  2. 02食欲、夜食、甘い物、飲酒、便秘、むくみを一緒に見る
  3. 03眠気で活動量が落ちていないか、回復して動けるようになったかを分ける
  4. 04必要に応じて血糖、HbA1c、脂質、肝機能などを確認する

「我慢する」か「やめる」かの二択ではありません

体重増加がつらい時は、「我慢して続ける」か「今日からやめる」かの二択ではありません。効果がどこに出ているかを確認し、食事と活動の調整、便秘への対応、服用時刻、用量、薬の変更を検討します。日本でうつ病治療薬として承認されていない薬を、体重だけを理由に安易な代替薬として勧めることはできません。

副作用が心配でも、処方薬を自己判断で急に減らしたり中止したりしないでください。つらさを我慢せず、変え方を相談することが大切です。

早めの相談・医療評価が必要な変化

働く方では、生活と仕事への影響まで確認します

体重の数字だけでなく、制服がきつい、階段で息切れする、人前に出ることを避けるなど、仕事と生活への影響を確認します。副作用への恥ずかしさから治療を中断しないよう、診察で話しにくいことほど共有していただくことが大切です。

よくある質問

Q抗うつ薬を飲むと必ず太りますか
A

必ずではありません。薬剤ごとの平均的な傾向はありますが、減る方、変わらない方、増える方がいます。開始前と開始後を同じ条件で比べます。

Q太ったらすぐ薬を変えるべきですか
A

体重の変化量、期間、薬の効果、他の原因、代替薬の負担を一緒に見て判断します。自己判断で中止すると中止症状や再燃が起こることがあります。

Q食事と運動だけで何とかするべきですか
A

生活調整は大切ですが、副作用を本人の努力不足にしません。薬の選択や用量も含め、治療全体の問題として扱います。

まとめ

副作用は、薬の名前だけでなく、開始前の状態、用量を変えた時期、他の薬、身体状態、生活への影響から評価します。よくある変化でも、本人にとって治療を続けられないほどつらければ、調整すべき問題です。

「薬のせいかもしれない」と感じた時は、自己判断で結論を出す前に、何がいつから変わったかを記録して相談してください。治療の効果を残しながら、負担を小さくできる方法を一緒に探します。

参考資料

  1. Petimar J, et al. Medication-Induced Weight Change Across Common Antidepressant Treatments. Ann Intern Med. 2024. 文献情報
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 患者向医薬品ガイド 文献情報

本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や処方に代わるものではありません。処方薬を自己判断で開始、増量、減量、中止しないでください。異常を感じた場合は医師・薬剤師へ相談してください。

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