MEDICATION GUIDE 03

睡眠薬とは?種類・効果・副作用と選び方

コラム

「睡眠薬は、飲み始めたら一生やめられないのでしょうか」

「新しい睡眠薬なら、どれを選んでも安全ですか」

睡眠薬は一つの種類ではありません。脳の興奮を抑える薬、覚醒を支えるオレキシンの働きを弱める薬、体内時計に働く薬などがあり、寝つけない、中途覚醒、早朝覚醒といった不眠の形や翌日の生活によって選び方が変わります。

「最も強い睡眠薬」を探すより、なぜ眠れないのか、どの時間帯が崩れているのか、翌朝に何をする必要があるのかを確認する方が、安全で実用的な治療につながります。

眠れない原因は、薬を選ぶ前に確認する

不眠は病名であると同時に、別の状態の一症状でもあります。うつ病、不安症、双極症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、痛み、甲状腺疾患、夜間頻尿、カフェイン、アルコール、交替勤務、昼寝などを確認します。

特に、いびきと無呼吸、朝の頭痛、日中の強い眠気がある場合は、睡眠薬を追加するだけでは十分でないことがあります。睡眠時間が短くても日中に困っていない「短時間睡眠」と、眠る機会はあるのに眠れず日中に支障がある「不眠症」も分けて考えます。

SLEEP ONSET

寝つけない

床に入ってから長く眠れない状態です。就床時刻、体内時計、カフェイン、スマホ、緊張を確認します。

SLEEP MAINTENANCE

夜中に何度も起きる

睡眠時無呼吸、飲酒、痛み、室温、薬の作用時間なども関係します。

EARLY MORNING

早朝に目が覚める

うつ状態、体内時計の前進、就床が早すぎないかなどを確認します。

DAYTIME FUNCTION

翌日の支障がある

不眠症の治療では、夜の数字だけでなく、日中の眠気、疲労、集中力の回復が大切です。

主な睡眠薬の種類

OREXIN RECEPTOR ANTAGONISTS

オレキシン受容体拮抗薬

覚醒を維持するオレキシンの働きを弱めます。寝つきや中途覚醒の改善に使われます。翌朝の眠気、悪夢、金縛りに似た症状、ほかの薬との相互作用などを確認します。

MELATONIN RECEPTOR AGONIST

メラトニン受容体作動薬

睡眠と覚醒のリズムに働きます。効果は比較的穏やかで、即効性の強い鎮静薬とは性質が違います。生活時刻の調整も一緒に行います。

BENZODIAZEPINES

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

脳の興奮を抑え、寝つきや睡眠維持を助けます。眠気、ふらつき、記憶への影響、身体依存、離脱症状に注意します。

Z-DRUGS

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

化学構造は違いますが、GABA系に作用します。ベンゾジアゼピン系と同様、翌朝への持ち越し、ふらつき、健忘、複雑睡眠行動などを確認します。

OTHER SEDATING MEDICINES

鎮静性のあるほかの薬

抗うつ薬や抗精神病薬の一部には眠気がありますが、不眠だけを理由に使うかは、適応と副作用を慎重に検討します。「眠くなる=睡眠薬」ではありません。

睡眠の認知行動療法(CBT-I)は何をするのか

CBT-Iは「寝る前にリラックスしましょう」だけではありません。眠れない時間を床で長く過ごすことで、寝床と覚醒が結びつく悪循環を見直し、睡眠時間と就床時間を調整し、眠りへの過度な心配を扱います。

  • 刺激統制眠くなってから床に入り、眠れない状態が長く続くときは一度床を離れるなど、寝床と眠りを結び直します。
  • 睡眠時間の調整床にいる時間を実際の睡眠に近づけ、睡眠のまとまりを作ります。自己流で極端に行うと危険なため、状態に合わせます。
  • 考え方の整理「8時間眠れないと明日は何もできない」など、不眠をさらに強める予測を現実に照らして見直します。
  • 生活リズム起床時刻、朝の光、昼寝、運動、カフェイン、飲酒を調整します。

翌朝の仕事と運転まで含めて評価する

眠れた時間が増えても、翌朝にふらつく、ぼんやりする、会議中に眠る、通勤運転が危険になるなら、治療全体としては見直しが必要です。翌朝に十分な睡眠時間を確保できない日に、遅い時間から追加で服用するのも危険です。

NEXT MORNING

持ち越しを確認する

起床時の眠気、ふらつき、反応速度を確認します。初回や変更後は特に注意します。

SHIFT WORK

夜勤では時計だけで決めない

服用後に確保できる睡眠時間と、次の勤務・運転までの間隔から考えます。

ALCOHOL

寝酒と併用しない

アルコールは寝つきを短くしても睡眠を浅くし、薬の鎮静や呼吸への影響を強めます。

いつまで飲むか、どうやめるか

日本睡眠学会のガイドラインは、処方後に効果と副作用を評価せず漫然と続けることを避け、治療の出口を患者と共有する重要性を示しています。日中の支障まで改善したら、継続の利益と減量の希望を相談します。

ベンゾジアゼピン系やZ薬は、長期服用後に急に中止すると反跳性不眠や離脱症状が起こることがあります。ゆっくり減らす、服用日を調整する、別の治療へ移るなどの方法は、薬の種類と服用状況により異なります。オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬も「どんなやめ方でもよい」とは限らないため、処方医と相談します。

よくある質問

Q新しい睡眠薬には依存がありませんか?
A

薬ごとに身体依存や離脱の特徴は異なりますが、「新しいから副作用も問題もゼロ」とは言えません。翌朝の眠気や相互作用も含めて評価します。

Q毎晩飲むのと、必要な日だけ飲むのはどちらがよいですか?
A

薬の種類と不眠の経過によります。毎晩同じ条件で整える方がよい場合も、頓服がよい場合もあります。自己判断で頻繁に切り替えません。

Q眠れない時、夜中に追加してもいいですか?
A

翌朝まで作用が残り、転倒や運転の危険が高まることがあります。処方時に具体的な指示がない限り、自己判断で追加しないでください。

Q市販の睡眠改善薬なら安全ですか?
A

抗ヒスタミン作用による眠気を利用する製品が多く、口渇、便秘、翌日の眠気、耐性などがあります。長引く不眠を自己治療し続けないでください。

参考文献・診療ガイドライン

  1. Riemann D, Espie CA, Altena E, et al. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. J Sleep Res. 2023;32:e14035. PubMed.
  2. 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ.睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
  3. Sateia MJ, Buysse DJ, Krystal AD, Neubauer DN, Heald JL. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults. J Clin Sleep Med. 2017;13:307-349. PDF.
  4. National Institute for Health and Care Excellence. Medicines associated with dependence or withdrawal symptoms (NG215). 2022.

この記事は一般的な医学情報です。睡眠薬の適応、服用時刻、運転可否、減量方法は薬剤と生活状況によって異なります。自己判断で追加・増量・中止せず、処方医または薬剤師へご相談ください。

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