MEDICATION GUIDE 01

抗うつ薬・SSRIの総合ガイド|種類・違い・副作用と選び方

コラム

「抗うつ薬を飲むと、性格まで変わってしまうのでしょうか」

「一度始めたら、やめられなくなるのではと心配です」

抗うつ薬(一般には「抗うつ剤」と呼ばれることもあります)は、気分を無理に明るくしたり、つらい出来事を忘れさせたりする薬ではありません。うつ病などで落ち込んだ気分、興味の低下、不安、考えにくさ、身体の重さが続くときに、回復しやすい状態をつくるための治療選択肢です。

なかでもSSRIは、うつ病だけでなく、不安症、パニック症、社交不安症、強迫症などでも検討される代表的な抗うつ薬です。ただし、SSRIは一種類ではありません。同じ分類でも、国内で承認されている病気、相互作用、副作用、中止時の症状には違いがあります。

抗うつ薬を使うかどうかは、「つらいか」だけで決めません。症状の種類と重さ、双極症など別の病気の可能性、これまでの反応、仕事や生活への影響、副作用への希望を一緒に確認して決めます。

SSRIとは?抗うつ薬との違い

SSRIは抗うつ薬の一分類です。正式には「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」といい、脳内でセロトニンが働く仕組みを調整します。「抗うつ薬」と「SSRI」が別々の治療という意味ではなく、抗うつ薬という大きな枠の中にSSRI、SNRI、NaSSA、三環系などがあります。

ANTIDEPRESSANTS

抗うつ薬

うつ病を中心に、不安症や強迫症などにも使う薬の総称です。作用の仕組みによって複数の分類があります。

SSRI

SSRI

現在よく使われる抗うつ薬の一群です。比較的安全性が高い一方、吐き気、性機能への影響、開始初期の焦燥や中止症状に注意します。

NOT A SEDATIVE

頓服で不安を止める薬ではない

飲んだ直後に気持ちを落ち着ける薬ではありません。毎日服用し、数週間の経過から効果を判断します。

NOT ONE-SIZE-FITS-ALL

SSRI同士にも違いがある

病名、過去の反応、併用薬、仕事、妊娠の予定、避けたい副作用から選びます。

抗うつ薬は、どのようなときに使うのか

主な対象はうつ病ですが、薬によっては全般性不安症、パニック症、社交不安症、強迫症、心的外傷後ストレス症などにも使われます。同じ薬でも、目的によって必要な量や評価する期間が違います。

軽いうつ状態では、心理療法、休養、生活や職場環境の調整を先に選ぶことがあります。一方、食事や睡眠が大きく崩れている、仕事や家事がほとんどできない、希死念慮がある、過去に抗うつ薬がよく効いた、といった場合には薬物療法の比重が上がります。薬だけ、心理療法だけという二択ではなく、組み合わせることもあります。

主な種類と、選ぶときに見る違い

SSRI

選択的セロトニン再取り込み阻害薬

レクサプロ、ジェイゾロフト、パキシル、ルボックス/デプロメールなど。うつ病や多くの不安症で広く使われます。

SNRI

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

イフェクサー、サインバルタ、トレドミンなど。うつ病のほか、薬によっては痛みを伴う状態にも使われます。

NaSSA

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬

リフレックス/レメロン(ミルタザピン)。眠気や食欲増加を、利益にも負担にもなり得る特徴として評価します。

MULTIMODAL

作用点が複数ある抗うつ薬

トリンテリックス(ボルチオキセチン)など。複数のセロトニン受容体と再取り込み機構へ作用します。

TRICYCLIC / OTHERS

三環系・四環系など

長く使われてきた薬で、有効な場面もあります。口渇、便秘、立ちくらみ、眠気、心臓への影響、過量服薬時の安全性などから、使う場面を慎重に選びます。

代表的な抗うつ薬・SSRIを一覧で比較

代表的な抗うつ薬の分類、一般名、特徴と主な確認点
分類薬剤名特徴主な確認点
SSRIレクサプロ
エスシタロプラム
うつ病・うつ状態や社交不安症で使われる。1日1回。吐き気、眠気・不眠、性機能、QT延長や併用薬。
SSRIジェイゾロフト
セルトラリン
うつ病・うつ状態、パニック症、PTSDなどで使われる。吐き気、下痢、性機能、開始初期の焦燥。
SSRIパキシル
パロキセチン
不安症領域を含め国内承認が広い。眠気、性機能、体重、薬物相互作用、中止症状。
SSRIルボックス/デプロメール
フルボキサミン
うつ病・うつ状態、強迫症、社交不安症などで使われる。悪心、眠気、併用薬との相互作用。
SNRIイフェクサー
ベンラファキシン
用量によりセロトニンとノルアドレナリンへの作用の比重が変わる。吐き気、発汗、血圧、中止症状。
SNRIサインバルタ
デュロキセチン
うつ病に加え、承認された慢性疼痛領域でも使われる。悪心、眠気、口渇、血圧、肝機能、排尿症状。
NaSSAリフレックス/レメロン
ミルタザピン
不眠や食欲低下を伴う時に特徴を生かせる場合がある。眠気、食欲増加、体重増加。
その他トリンテリックス
ボルチオキセチン
セロトニン再取り込み阻害と複数の受容体作用をもつ。吐き気、めまい、性機能など。

※上表は違いを理解するための要約であり、効能・効果や注意事項のすべてではありません。商品名や分類だけで自己選択せず、最新の添付文書と個別の診察に基づいて判断します。

SSRIの中でも特徴は同じではありません。パキシル(パロキセチン)は不安症領域まで国内承認が広い一方、眠気、性機能、体重、離脱症状、併用薬を丁寧に確認したい薬です。レクサプロ、ジェイゾロフト・セルトラリンも含め、病名だけでなく生活と副作用への希望から選びます。

「新しい薬ほど強い」「眠くなる薬は弱い」とは言えません。過去に効いた薬、家族に合った薬、併用薬、身体疾患、妊娠の予定、勤務時間、運転の有無まで含めて選びます。

症状だけで、薬を自動的に決めるわけではありません

ANXIETY

不安・パニックが強い

SSRIが候補になりますが、開始初期に不安や焦燥が強まらないよう、開始量と経過観察を工夫します。

SLEEP & APPETITE

眠れない・食べられない

鎮静や食欲への作用が役立つ場合もありますが、翌日の眠気や体重増加との釣り合いを見ます。

PAIN

痛みを伴っている

痛みへの適応を持つSNRIが候補になる場合があります。身体疾患の評価を省くものではありません。

WORK & DRIVING

仕事・運転を続けたい

眠気、ふらつき、発汗、排尿症状、吐き気など、勤務に影響する副作用を具体的に確認します。

WEIGHT & SEXUAL HEALTH

体重・性機能を重視したい

治療継続に関わるため、開始前から避けたい副作用を共有します。言いにくい症状も重要な判断材料です。

PAST RESPONSE

以前の薬が効いた・合わなかった

過去の効果、副作用、中止症状、家族の治療歴は、次の薬を選ぶ手がかりになります。

飲み始めてから、いつ効果を判断するのか

抗うつ薬は、服用した直後に気分が晴れる薬ではありません。NICEは、効果が得られる場合には通常4週間以内に変化が現れると説明し、開始後2週間程度で効果と副作用を確認するよう勧めています。18〜25歳の方や自殺リスクが特に心配な方では、開始または増量後1週間での確認が推奨されています。

  1. 01
    FIRST DAYSまず「続けられるか」を確認する

    吐き気、眠気、不眠、頭痛、落ち着かなさなどが出ていないかを見ます。副作用が強いときは、我慢して予定どおり増量するとは限りません。

  2. 02
    2–4 WEEKS症状と生活の小さな変化を見る

    涙が減った、朝の重さが少し短くなった、食事が取れる、仕事のミスが減ったなど、気分の点数だけでなく機能を確認します。

  3. 03
    AFTER RESPONSE改善後もしばらく再発を防ぐ

    寛解後も少なくとも6か月程度は続けることが一般的ですが、再発回数や重症度、副作用、本人の希望によって調整します。

「効かない」と感じたとき、増量の前に確認すること

抗うつ薬は、増やせば比例して効果が強くなるとは限りません。服用できているか、十分な期間があるか、現在の症状がうつ病・不安症によるものか、睡眠や飲酒、身体疾患、仕事環境が回復を妨げていないかを確認します。

DIAGNOSIS

診断を見直す

双極症、発達特性、睡眠障害、甲状腺疾患、薬物・アルコールの影響などを再確認します。

DOSE & DURATION

量と期間を分ける

低用量のまま期間だけ待っているのか、十分な量でも反応が乏しいのかで次の判断は変わります。

PARTIAL RESPONSE

何がどこまで変わったか

睡眠、食欲、不安、朝の動き、仕事の正確さなどを分け、部分的な改善を見落とさないようにします。

SIDE EFFECTS

副作用との釣り合い

効果が少し増えても、吐き気、眠気、性機能、発汗、血圧などの負担が大きくなるなら別の方法を考えます。

副作用は「ある・ない」ではなく、生活への影響を見る

副作用の出方には個人差があります。開始直後に出て軽くなるものも、服用中に続くものもあります。薬を変更するかは、症状への効果との釣り合いで考えます。

  • 胃腸症状吐き気、下痢、食欲の変化。食後服用や増量速度の調整で対応できる場合があります。
  • 眠気・不眠服用時刻の調整で改善することもあります。翌日の運転や機械操作に影響する場合は早めに相談します。
  • 性機能への影響性欲低下、射精・オルガズムの遅れなど。尋ねにくい症状ですが、薬の選択や変更に関わる大切な情報です。
  • 落ち着かなさ・焦燥じっとしていられない、衝動性が増す、希死念慮が強まるなどの変化は、次回予約を待たずに相談してください。
  • 躁状態の可能性睡眠が少なくても平気、話し続ける、活動や出費が急に増えるなどがあれば、双極症の評価が必要です。

早めの連絡や医療評価が必要な変化

多くの副作用は軽く、開始後に弱まることもあります。ただし、次のような変化は通常の次回診察まで我慢せず、処方元や医療機関へ相談してください。

死にたい気持ちや衝動性の悪化、眠らなくても平気な高揚、発熱・強い発汗・震え・筋肉のこわばり・下痢・混乱が重なる状態、けいれんや意識の変化、強いアレルギー症状などは、早めの評価が必要です。

高齢の方、利尿薬を使用している方では低ナトリウム血症、抗凝固薬やNSAIDsなどを使用している方では出血傾向にも注意します。併用薬、市販薬、サプリメントを含めて医師・薬剤師へ伝えてください。

働きながら飲むときに確認したいこと

治療の目的は、症状の点数を下げることだけではなく、生活と仕事を取り戻すことです。眠気で通勤が危険になったり、会議中に集中できなかったりするなら、効果があってもそのままでは適切とは限りません。

STARTING DAY

開始日を選ぶ

副作用が心配な薬は、重要な会議や長距離運転の前日を避け、休日前から始める方法を検討します。

DRIVING

運転は薬ごとの指示を確認する

添付文書上の注意と、自分に眠気・ふらつきがあるかの両方を確認します。自己判断で「慣れたから大丈夫」としません。

SHIFT WORK

勤務時刻に合わせる

夜勤や交替勤務では、服用時刻と睡眠時間を通常勤務と同じにできません。勤務表を見ながら調整します。

やめるときに起こる「離脱症状」

抗うつ薬には、ベンゾジアゼピン系薬のような酔いを求める依存が一般に問題になるわけではありません。しかし、急に中止したり飲み忘れたりすると、めまい、電気が走るような感覚、不安、いらだち、不眠、吐き気、動悸などの離脱症状が出ることがあります。

NICEは、薬の半減期、服用期間、これまでの離脱症状を考慮し、前の量に対する一定割合で段階的に減らし、低用量になるほど減らす幅を小さくする方法を示しています。離脱には数週から数か月かかる場合もあります。「何mgずつ」「何週間ごと」が全員に共通するわけではありません。

急な中止後、数日以内に今までと違うめまいや感覚異常が出た場合は、再発ではなく離脱症状の可能性があります。ただし自己判断で再開・増減せず、処方医へ連絡してください。

妊娠・授乳を考えている方へ

妊娠が分かったからといって、抗うつ薬を急に中止することが最も安全とは限りません。薬によるリスクだけでなく、治療を中断して症状が再燃するリスクもあります。妊娠の予定、過去の重症度、再発歴、使用薬、妊娠時期を踏まえ、精神科・産婦人科と相談して方針を決めます。

よくある質問

Q抗うつ薬で性格は変わりますか?
A

通常の目的は性格を変えることではなく、症状で狭くなった考えや行動の幅を戻すことです。感情が平板になった感じが続く場合は、量や薬の見直しが必要なことがあります。

QSSRIはどれも同じですか?
A

同じ分類でも、国内で承認されている病気、相互作用、半減期、眠気、胃腸症状、性機能、中止症状などが異なります。以前の反応や避けたい副作用も選択に関わります。

Q不安症でも抗うつ薬を使うのですか?
A

SSRIなどは、パニック症、社交不安症、強迫症などでも使用されます。すぐ効く頓服薬ではないため、少量から開始し、数週間かけて反応を見ることがあります。

Q効かなければ、すぐ別の薬に変えますか?
A

飲めているか、量と期間が十分か、診断や併存症に見落としがないかを確認します。副作用が強い場合を除き、数日だけで無効とは判定しません。

Q一生飲み続けるのでしょうか?
A

一律ではありません。初回か再発か、重症度、過去に減らした時の経過、副作用、本人の希望から継続期間を見直します。安定していても急にはやめません。

Q抗うつ薬には依存性がありますか?
A

一般に、酔いや快感を求めて量を増やし続けるタイプの依存性が中心となる薬ではありません。ただし身体が薬のある状態へ適応するため、急な中止で離脱症状が起こることがあります。

Qお酒と一緒に飲んでもいいですか?
A

眠気や判断力低下が強まり、症状や睡眠も悪化することがあります。薬ごとの指示を確認し、少なくとも開始・変更直後は避けてください。

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参考文献・診療ガイドライン

  1. 日本うつ病学会.うつ病診療ガイドライン2025.
  2. National Institute for Health and Care Excellence. Depression in adults: treatment and management (NG222). Updated recommendations on starting and stopping antidepressants, 2022.
  3. Cipriani A, Furukawa TA, Salanti G, et al. Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder. Lancet. 2018;391:1357-1366. PMC.
  4. National Institute for Health and Care Excellence. Medicines associated with dependence or withdrawal symptoms (NG215). 2022.
  5. National Institute for Health and Care Excellence. Antenatal and postnatal mental health (CG192).

この記事は一般的な医学情報の提供を目的とし、個別の診断や処方変更を指示するものではありません。薬の適応、用量、運転可否、妊娠・授乳中の方針は薬剤と状況により異なります。自己判断で開始・増減・中止せず、処方医または薬剤師へご相談ください。

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