DEFENSE MECHANISM

身体化とは?

その反応が、何から心を守っているのかを考えます
REALITY & AFFECT

「検査では大きな異常がない。でも、本当にしんどい」。身体とこころを二択にしないことが大切です。

「検査では大きな異常がない。でも、本当にしんどい」。身体とこころを二択にしないことが大切です。

WHAT IT PROTECTS

身体化は、何から心を守っているのか。

「つらい」「休みたい」と言うことが難しい人にとって、身体の症状が初めて許される休息の理由になることがあります。身体が本人より先に「これ以上は難しい」と伝えているのかもしれません。

一方、実際の身体疾患と心理的な負担は両立します。一度の正常検査を理由にその後の新しい症状まで「自律神経」と決めず、必要な身体評価と生活の評価を並行します。

READING

――身体が先に「もう無理」と言っていることがある

朝になると吐き気がする。

会社へ近づくと動悸がする。

大事な会議の前だけ頭痛が出る。

休日になると少し楽になる。

病院へ行った。

血液検査もした。

心電図も受けた。

「大きな異常はありません」

と言われた。

それなのに、症状はある。

すると、

「じゃあ、この苦しさは何なんだろう」

と思います。

さらに、

「気にしすぎなのかな」

「自分で症状を作っているのかな」

と、自分まで疑い始めることがあります。

でも、

検査で大きな異常が見つからないことと、症状が存在しないことは別です。

吐き気は本当に気持ち悪い。

動悸は本当に起きている。

頭痛も、めまいも、だるさも、本当に身体で感じています。

身体化という言葉は、

「気のせい」

という意味ではありません。

心理的な負荷や緊張が、言葉よりも身体の反応として前面に出てくることを説明する、一つの考え方です。

CONTENTSこの記事の見出し
  1. 01「精神的には大丈夫です。でも身体だけしんどいんです」
  2. 02身体症状が、「休むための理由」になっていることもある
  3. 03身体化では、「身体か、こころか」を決めなくていい
  4. 04「身体化」と「身体症状症」は同じではありません
  5. 05「検査で異常がないのに何度も受診してしまう」時
  6. 06身体症状は、「記録すると原因が見える」ことがある
  7. 07「原因を証明するため」ではなく、「条件を見つけるため」に記録する
  8. 08身体科と精神科、どちらへ行けばいいのでしょう
  9. 09「身体科で異常なし」になったら、精神科へ丸投げするわけではない
  10. 10「身体の症状だから身体科」「ストレスだから精神科」と固定しない
  11. 11「いつも自律神経だから」と決めつけない方がいい症状もある
  12. 12身体症状に注意を向けすぎると、さらに身体が気になることがある
  13. 13「身体を気にしないようにする」必要はない
  14. 14身体が大声を出す前に、小さい信号を使う
  15. 15「胃が痛い」に、一つだけ言葉を足してみる
  16. 16身体化を「卒業する」とは、身体症状がゼロになることではない
  17. 17身体化で一番大切にしたいこと

「精神的には大丈夫です。でも身体だけしんどいんです」

こう話す方がいます。

仕事は嫌いではない。

別に落ち込んでもいない。

自分では、

「そこまでストレスは感じていません」

と思っている。

でも、

会社の日だけ腹痛がある。

上司から連絡が来ると動悸がする。

日曜の夜になると頭痛がする。

繁忙期になるとめまいが増える。

ここで、

「本当はストレスを感じているはずです」

と決めつける必要はありません。

ただ、

自分が「大丈夫」と思えていることと、身体に負荷がかかっていないことは同じではありません。

言葉ではまだ「つらい」と思っていなくても、

身体の方が先に反応していることがあります。

身体症状が、「休むための理由」になっていることもある

責任感の強い方ほど、

「疲れた」

だけでは休めないことがあります。

「みんな働いている」

「この程度で休めない」

「迷惑をかけたくない」

と思う。

でも、

38度の熱がある。

吐いてしまう。

頭痛で動けない。

となれば、

ようやく休める。

つまり、

「つらいから休む」は認められなくても、「身体が悪いから休む」なら認められる。

そういうことがあります。

すると身体症状は、

本人を困らせるだけではなく、

限界を超えた自分をようやく止めてくれる役割

まで持つことがあります。

だから治療では、

身体症状をなくすことだけではなく、

「身体がここまで大声を出さなくても休めるようにする」

ことも大切になります。

身体化では、「身体か、こころか」を決めなくていい

ここはとても重要です。

腹痛がある。

だから身体疾患。

あるいは、

ストレスがある。

だから精神的な問題。

と、どちらか一つに決める必要はありません。

胃腸の病気があり、

その症状への不安も強くなっている。

片頭痛があり、

仕事の緊張でさらに悪化している。

ということもあります。

つまり、

身体疾患があることと、心理的な負荷が身体症状を増幅していることは両立します。

必要な身体評価を受けながら、睡眠、緊張、生活、仕事との関係も同時に見ます。

「身体化」と「身体症状症」は同じではありません

ここは患者さん向けにも一度説明しておいた方がよいと思います。

身体化は、

心理的な負担や感情が身体症状として表れやすくなる「心の働き・現象」を表す言葉です。

それ自体がDSMの診断名というわけではありません。

一方、

身体症状症(Somatic Symptom Disorder)は診断概念です。

一つ以上の身体症状があり、その症状に関連した強い不安、心配、身体への注意、医療受診・確認などに多くの時間やエネルギーを使い、生活に大きな支障が出ていることなどを総合して判断します。

重要なのは、

身体症状症は「検査で異常がない人につける診断」ではない

ということです。

実際の身体疾患が存在していても、その症状をめぐる不安や行動による負担が非常に大きければ、身体症状症が問題になることがあります。現在の診断概念では、「医学的に説明できるかどうか」そのものより、症状への反応や生活への影響が重視されています。

「検査で異常がないのに何度も受診してしまう」時

身体がつらい。

心配になる。

病院へ行く。

「大きな異常はありません」

と言われる。

少し安心する。

でも数日すると、

「見落とされているのでは」

と思う。

別の病院へ行く。

また安心する。

でも、また不安になる。

この場合、

検査を受けることが悪いわけではありません。

必要な検査は大切です。

ただ、

危険な病気を除外するための検査と、100%安心するための検査は少し違います。

完全な安心を目的にすると、

検査をしても次の可能性が気になり、確認が終わらなくなることがあります。身体症状症では、身体のチェックや医療受診を繰り返しても安心が長く続かないことがあります。

身体症状は、「記録すると原因が見える」ことがある

「体調が悪いです」

だけでは、なかなか関係が見えません。

おすすめしたいのは、

細かい日記ではなく、

症状・時間・場面・睡眠の4つだけ記録すること

です。

たとえば、

日時症状その時の場面前夜の睡眠強さ
月 7:30吐き気出勤準備中5時間7/10
月 11:00軽減通常業務3/10
火 14:00動悸上司との面談前6時間8/10
水 10:00ほぼなし休日7時間1/10

ポイントは、

「ストレスだったか」

を最初から決めないことです。

まず、

いつ、どこで、どれくらい起きたか

だけ記録します。

すると、

仕事の日だけ強い。

睡眠5時間以下だと増える。

会議前だけ動悸が出る。

食後だけ悪化する。

など、パターンが見えてきます。

「原因を証明するため」ではなく、「条件を見つけるため」に記録する

ここも大切です。

記録を始めると、

「やっぱり会社のせいだ」

「やっぱり精神的なものだ」

と原因を確定したくなることがあります。

でも目的はそこではありません。

何を変えると症状が動くか

を見ることです。

睡眠を増やしたら?

残業を減らしたら?

会議前に休憩を入れたら?

食事時間を変えたら?

その結果、症状がどうなるか。

原因を一つに決めなくても、

負担を減らす方法は見つけられます。

身体科と精神科、どちらへ行けばいいのでしょう

結論からいうと、

必ずどちらか一方を選ぶ必要はありません。

新しく出た症状。

これまでと明らかに違う症状。

症状が急に強くなった。

体重減少、発熱、出血など身体疾患を疑う所見がある。

こうした場合には、まず身体科での評価が重要です。

一方、

必要な身体評価を受けても大きな異常がなく、

仕事や特定場面との関係が強い。

不安や不眠も伴う。

症状への心配や確認で生活がかなり占領されている。

症状のために外出・出勤などを避けるようになっている。

という場合には、精神科・心療内科で一緒に整理する意味があります。身体症状症の評価でも、身体疾患の確認と精神科的評価を組み合わせることが推奨されています。

「身体科で異常なし」になったら、精神科へ丸投げするわけではない

理想的なのは、

身体科で必要な病気を確認しながら、精神科では症状と生活との関係を見る

ことです。

循環器内科で動悸を評価する。

同時に、

会議前にだけ悪化することや、パニック症状がないかを見る。

消化器内科で胃腸症状を評価する。

同時に、

出勤前に症状が強くなることや、不安・過緊張との関係を見る。

「異常がないので精神科へ」

ではなく、

身体とこころを並行して扱う

という考え方です。

「身体の症状だから身体科」「ストレスだから精神科」と固定しない

たとえば、

以前検査して異常がなかった。

だから、

新しく強い胸痛が出ても、

「またストレスだろう」

と考える。

これは危険です。

逆に、

毎回同じパターンの動悸が出るたび、

新しい病院で一から検査を繰り返す。

これも本人の負担が大きくなることがあります。

必要なのは、

過去に異常がなかったことと、今回の症状が同じものか

を見ることです。

症状が変わったなら、身体評価をやり直す。

パターンが同じで身体評価も十分なら、心理・生活面への対処を増やす。

そのくらい柔軟に考えます。

「いつも自律神経だから」と決めつけない方がいい症状もある

身体化という視点を知ると、

反対に何でも、

「ストレス」

「自律神経」

で説明したくなることがあります。

これは避けたいところです。

たとえば、

突然始まった強い胸痛や圧迫感が続く。

胸痛に強い息苦しさ、冷汗、吐き気、ふらつきなどを伴う。

突然、片側の手足が動かしにくい。

顔の片側が下がる。

ろれつが回らない。

意識を失う。

急激で非常に強い頭痛が出る。

強い呼吸困難がある。

といった症状では、

「また不安だろう」

と自己判断せず、救急受診・119を含めた身体疾患の評価を優先します。

胸痛では、持続する圧迫感や腕・顎・背中などへの放散、発汗・息切れなどを伴う場合は緊急評価が必要とされています。

以前パニック発作があった人でも、新しい症状はすべてパニック発作とは限りません。

ここは大切です。

身体症状に注意を向けすぎると、さらに身体が気になることがある

動悸が出た。

脈を測る。

少し速い。

「やっぱりおかしい」

と思う。

さらに緊張する。

もっと心拍が上がる。

また測る。

同じように、

胃が少し気持ち悪い。

何度も胃の感じを確認する。

少し違和感がある。

「吐くかもしれない」

と不安になる。

さらに吐き気が強くなる。

つまり、

身体症状

身体へ注意が集中する

小さな感覚まで見つかる

危険に感じる

緊張が増える

身体症状が強くなる

という循環が起きることがあります。

これは、症状が偽物という意味ではありません。

本当にある身体反応に、警戒が上乗せされている

ということです。

「身体を気にしないようにする」必要はない

症状があるのに、

「気にしないように」

と言われても難しいと思います。

むしろ、

身体の反応を、

危険を確定する証拠ではなく、今の状態を知らせる情報

として扱います。

「また動悸がした。危険だ」

だけではなく、

「今日は睡眠が4時間だった」

「午後からずっと緊張していた」

「会議前から心拍が上がっている」

と、周囲の条件も一緒に見る。

身体だけを監視する状態から、

身体+状況を見る状態

へ変えます。

身体が大声を出す前に、小さい信号を使う

いつも、

吐き気が出てから休む。

頭痛が限界になってから帰る。

動けなくなってから仕事を減らす。

という人がいます。

でも、その少し前に、

肩に力が入る。

食欲が落ちる。

呼吸が浅い。

人の言葉にイライラする。

帰宅後の回復に時間がかかる。

という小さなサインがあるかもしれません。

治療では、

身体が10まで悪くなったら休むのではなく、4や5の段階で調整する

ことを目指します。

「胃が痛い」に、一つだけ言葉を足してみる

身体化への治療は、

身体症状を心理的な言葉へ無理に変換することではありません。

ただ、

「胃が痛い」

だけだったところに、

「明日の会議が少し怖いかもしれない」

を足してみる。

「頭が痛い」

に、

「今日はかなり我慢している」

を足してみる。

身体か、感情か。

どちらか一方にするのではなく、

両方を同時に持てるようにする。

それだけでも変わることがあります。

身体化を「卒業する」とは、身体症状がゼロになることではない

身体はこれからも反応します。

緊張すれば心拍は上がる。

疲れれば頭痛も出る。

胃腸の調子も変わる。

それ自体を全部なくす必要はありません。

大切なのは、

症状が出た時に、

すぐ「重大な病気だ」と決めない。

反対に、

すぐ「ストレスだから」と決めない。

必要なら身体科へ行く。

必要な評価が済んでいるなら、生活へ戻る。

仕事との関係を見る。

休む。

感情も少し言葉にする。

つまり、

身体の症状を、身体だけの問題にも、こころだけの問題にもしない。

身体化で一番大切にしたいこと

身体症状が続くと、

自分の身体を信用できなくなることがあります。

少し動悸がする。

怖い。

少し頭が痛い。

心配になる。

そして、

「症状がなくなったら普通に生活しよう」

と思う。

でも、症状が完全にゼロになる日を待っていると、

生活の方が止まってしまうことがあります。

必要な身体評価を受ける。

危険な症状なら、ちゃんと医療につなぐ。

そのうえで、

症状がある日にも、

「今日は何ならできる?」

を考える。

そしてもう一つ、

「この身体は、何を知らせようとしているんだろう」

と見てみる。

疲労?

緊張?

怖さ?

睡眠不足?

仕事量?

言えなかった「休みたい」?

身体化を理解するというのは、

「全部こころのせいだった」と結論づけることではありません。

むしろ、

身体が本当に反応していることを認めたうえで、その反応を強めたり長引かせたりしている条件まで見ること。

そして、

身体が限界まで症状を出して初めて休める生活から、

小さな身体の変化を、早めに生活調整へ使える生活へ変えていくこと。

身体を黙らせるのではなく、

身体の声が大きくなる前に聞けるようになる。

それが、身体化とうまく付き合うということなのだと思います。

FIRST STEP

身体か、こころかの二択にしない

まず必要な身体評価を受けます。新しい症状、急に変わった症状、強い症状は、以前の検査が正常でも改めて身体面を確認します。

そのうえで、症状の時間、場面、睡眠、食事、業務、強さを簡単に記録します。原因を証明するためではなく、負担が強まる条件と対応の選択肢を見つけるための記録です。

「異常がないから我慢する」のではなく、身体の信号を休憩、業務調整、身体科と心療内科・精神科の連携につなげます。

AT WORK

仕事の中で、この反応が起きる時

出勤前だけの腹痛や、会議前の動悸も、本当に起きている症状です。「気持ちの問題」と片づけず、業務量、通勤、休憩、身体評価を一緒に考えます。

症状が10になってから止まるのではなく、4や5の段階で休憩、場所の移動、業務の共有を行います。完全に症状がなくなるまで生活を止めるのではなく、安全を確認しながら戻れる範囲を作ります。

症状と場面を簡単に記録する

発症時間、業務、相手、睡眠、強さを一行で残し、負担のパターンを見ます。

必要な検査と安心探しを分ける

何を除外するための検査か、結果後の方針は何かを医師と確認します。

症状に感情語を一つ添える

「胃が痛い」に「会議を怖いと感じているかもしれない」を足します。

早い信号で負担を下げる

動悸、呼吸、肩の緊張が軽い段階で、休憩や業務調整へつなげます。

MORE OPTIONS

その反応を奪わず、別の守り方を足す。

急に手放そうとすると、元のつらさだけが残ります。まず選択肢を一つ増やします。

01

身体科と心の診療を並行する

どちらか一方が正解と決めず、必要な評価を組み合わせます。

02

症状が許可する前に休む

明確な身体症状がなくても、疲労や余力の低下を理由に休憩を取ります。

03

記録の目的を限定する

身体を監視し続けず、1日1〜2回など回数を決めて記録します。

04

生活へ戻る目標も持つ

症状ゼロだけを目標にせず、食事、睡眠、散歩、人との時間を少しずつ取り戻します。

05

新しい変化を見逃さない

以前と違う症状は「またストレス」と決めず、医療者へ伝えます。

WHEN TO CONSULT

医療機関へ相談する目安

防衛機制そのものを治療するのではなく、生活への影響や背景にある症状を確認します。

  • 必要な身体評価を受けても、症状が続き生活や仕事を圧迫している
  • 出勤、会議、対人場面など特定の条件で症状が強まる
  • 症状の検索や確認に長い時間を使い、外出や仕事を避けている
  • 不安、不眠、気分の落ち込みも続いている
  • 何科へ相談すればよいか分からず、一人で困っている
REFERENCES参考文献・執筆上の注意表示する

防衛機制に関する総説・評価研究をもとに、患者さん向けに整理しています。

  1. Defense mechanisms: 40 years of empirical researchJ Pers Assess, 2015 / PMID: 25157632
  2. The Hierarchy of Defense Mechanisms: Assessing Defensive Functioning With the DMRS-QFront Psychol, 2021 / PMID: 34721167
  3. Involuntary coping mechanisms: a psychodynamic perspectiveDialogues Clin Neurosci, 2011 / PMID: 22034454
  4. Somatic symptom disorder: a scoping review on the empirical evidence of a new diagnosisPsychol Med, 2022 / PMID: 34776017

研究上の分類は複数あり、同じ反応の意味も状況によって異なります。このページだけで診断することはできません。

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