先に備えることで安心できる一方、準備の終わりが決められないと、まだ起きていない未来に今の生活を使い続けることがあります。
大切な予定の前に情報を集める。困った時の連絡先を確認する。いくつかの展開を想定して、代わりの案を用意する。先の負担を見越して準備することを、予期と呼びます。
予期は、将来のストレスに現実的に備える力です。突然の出来事に圧倒される可能性を下げ、自分で対処できる感覚を支えます。
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ただ、絶対に困らないところまで準備しようとすると、調べる、確認する、考え直すことが終わらなくなります。準備が心配の形を変えただけになることがあります。
予期は、何から心を守っているのか。
予想外のことが起きた時の無力感や、「何もできない自分になる」不安から守っています。準備しておけば、失敗しても立て直せるという感覚を持てます。
一方で、未来を完全に管理することはできません。安心できるまで準備するという基準では、安心が来ないまま準備だけが増えることがあります。
準備すると少し安心するため、次の不安にも準備を追加し、いつまでも「まだ足りない」と感じることがあります。
きっかけ
手術、異動、復職など避けられない将来の負担が近づく
起こる反応
必要な情報、支援、予定、代替案を前もって整える
その場の安心
何が起きても対処できる見通しが生まれる
続いた時の負担
準備が安心確認へ変わると、終わりなく最悪を想像し続けることがある
予期が現れやすい場面
行動だけで決めつけず、その前にどんな痛みや脅威があったかを一緒に見ます。
復職前に勤務条件と支援先を確認する
手術前に生活上の助けを準備する
忙しい時期の休息と代替案を決める
準備できることと、今は決められないことを分ける
紙を二つに分け、「今できる準備」と「起きてから対応すること」を書きます。今できる側が終わったら、不安が残っていても準備はいったん終了します。
準備の終了条件も先に決めます。「情報源を二つ確認したら終わり」「代替案を一つ作ったら終わり」のように、安心ではなく行動で区切ります。
仕事の中で、この反応が起きる時
復職、異動、面談などでは、勤務条件、相談先、体調が崩れた時の対応を準備することが役立ちます。一方、すべての質問への完璧な答えまでは用意できません。
必要な準備と、予測しても答えが出ない心配を分け、準備後は目の前の生活へ戻る時間を作ります。
プランBを一つ作る
完璧な計画ではなく、崩れた時の相談先だけ決めます。
準備の終了時刻を決める
確認できることが終わったら生活へ戻ります。
その反応を奪わず、別の守り方を足す。
急に手放そうとすると、元のつらさだけが残ります。まず選択肢を一つ増やします。
確率と対応を分ける
起こるかの予測より、起きた時の一手を決めます。
余白を作る
予定を詰めず、変化へ使える時間を残します。
支援を前もって頼む
苦しくなってからではなく、必要条件を共有します。
医療機関へ相談する目安
防衛機制そのものを治療するのではなく、生活への影響や背景にある症状を確認します。
- 準備に多くの時間を使い、睡眠や仕事へ影響している
- 最悪の予測が止まらず行動できない
未来を確実にするのではなく、起きた時に対処できる準備をする
予期は、不安をゼロにするためのものではありません。何かあっても次の一歩を選べるようにする力です。
準備したあとに不確実さが残っていても構いません。今できることを終えて、まだ起きていない未来から今日へ戻る。その区切りも準備の一部です。
REFERENCES参考文献・執筆上の注意表示する
防衛機制に関する総説・評価研究をもとに、患者さん向けに整理しています。
- Defense mechanisms: 40 years of empirical researchJ Pers Assess, 2015 / PMID: 25157632↗
- The Hierarchy of Defense Mechanisms: Assessing Defensive Functioning With the DMRS-QFront Psychol, 2021 / PMID: 34721167↗
- Involuntary coping mechanisms: a psychodynamic perspectiveDialogues Clin Neurosci, 2011 / PMID: 22034454↗
- Adaptive midlife defense mechanisms and late-life healthPsychol Aging, 2013 / PMC3767455↗
研究上の分類は複数あり、同じ反応の意味も状況によって異なります。このページだけで診断することはできません。
