「最高の人」が、失望した瞬間に「最低の人」へ変わることがあります。
信頼していた相手の一言で、今までの良いところが全部消えたように感じる。自分についても、成功した日は価値があり、失敗した日は何もない人間だと感じることがあります。
大切な相手へ怒ること、好きな人に欠点があること、自分に良い面と悪い面が同時にあることは、かなり不安な体験です。そこで心が、良い側と悪い側を分けて扱うことがあります。
この反応について、もう少し読む
この働きを「分裂」と呼びます。意図的に評価を変えているとは限りません。その瞬間には本当に、片方しか見えなくなることがあります。
分裂は、何から心を守っているのか。
「大切な人なのに傷つける」「好きだけれど腹が立つ」という矛盾を抱えずに済むため、感情を整理しやすくなります。
一方、評価が極端に切り替わると、関係を突然切る、自分を全否定するなど、大きな行動につながりやすくなります。
一方だけを見ると気持ちは整理されますが、評価と関係が大きく揺れやすくなります。
きっかけ
関係や自己評価が強く揺れ、相反する感情を一緒に持てない
起こる反応
最高か最低、味方か敵、成功か失敗へ大きく分ける
その場の安心
曖昧さが消え、相手や自分への対応をすぐ決められる
続いた時の負担
評価が急変し、関係や自己像が不安定になりやすい
分裂が現れやすい場面
行動だけで決めつけず、その前にどんな痛みや脅威があったかを一緒に見ます。
信頼していた人を一度の失望で最低だと感じる
褒められる自分と失敗した自分を別人のように扱う
意見が違う相手をすべて敵だと感じる
反対側の事実を一つだけ残す
「良い人だと思い直す」必要はありません。最低だと感じている時にも、以前助けられた事実が一つあったことだけを残します。
自分を全否定している時には、失敗した事実と、できている行動を一つずつ並べます。評価を中間にするより、両方を同時に置く練習です。
仕事の中で、この反応が起きる時
上司を「全部分かってくれる人」と感じた後、注意された瞬間に「敵」へ変わることがあります。強い感情の最中に退職や告発など大きな判断を急ぎません。
具体的に助かった行動と、問題だった行動を分け、人格全体ではなく業務上の事実として整理します。
重要判断を保留する
感情が強い日は退職・関係断絶を即決しません。
評価対象を小さくする
人全体ではなく、今回の行動や業務だけを評価します。
その反応を奪わず、別の守り方を足す。
急に手放そうとすると、元のつらさだけが残ります。まず選択肢を一つ増やします。
混ざった状態に留まる
好きでも腹が立つ、失敗しても価値がある、を許します。
時間軸を広げる
一回の出来事だけでなく、これまでの経過を見ます。
第三者と事実確認する
感情を否定せず、別の視点を加えます。
医療機関へ相談する目安
防衛機制そのものを治療するのではなく、生活への影響や背景にある症状を確認します。
- 人や自分への評価が急変し関係が壊れやすい
- 感情のピークで退職・自傷など大きな行動につながる
矛盾をなくすのではなく、二つを同時に持てる時間を増やす
評価が急に変わる自分を、気まぐれだと責めなくて構いません。その時の心には、矛盾を抱えない方が安全だったのかもしれません。
好きでも傷つく、能力があっても失敗する。両方が存在しても関係や自分が消えない経験を、少しずつ増やしていきます。
REFERENCES参考文献・執筆上の注意表示する
防衛機制に関する総説・評価研究をもとに、患者さん向けに整理しています。
- Defense mechanisms: 40 years of empirical researchJ Pers Assess, 2015 / PMID: 25157632↗
- The Hierarchy of Defense Mechanisms: Assessing Defensive Functioning With the DMRS-QFront Psychol, 2021 / PMID: 34721167↗
- Involuntary coping mechanisms: a psychodynamic perspectiveDialogues Clin Neurosci, 2011 / PMID: 22034454↗
研究上の分類は複数あり、同じ反応の意味も状況によって異なります。このページだけで診断することはできません。
