傷つけられる側から離れるため、傷つけた側の態度を身につけることがあります。
強く叱られてきた人が、後輩に同じ言い方をする。いじめられた経験のある人が、弱く見える相手へ厳しくなることがあります。
それは被害を受けた経験が軽かったからでも、本人が本来攻撃的だからとも限りません。「次は弱い側にならない」ために、強かった相手の態度やルールを取り込むことがあります。
この反応について、もう少し読む
この働きを「攻撃者との同一化」と呼びます。被害を受けた人を責めるための言葉ではありません。
攻撃者との同一化は、何から心を守っているのか。
傷つける側の考え方を持てば、何が起きるか予測でき、自分が再び無力になる怖さを減らせます。被害を受けた自分の恥や弱さからも距離を取れます。
ただし、その方法が続くと別の人を傷つけ、自分が恐れていた関係を再び作ることがあります。理解することと、行動の責任をなくすことは別です。
強い側へ移ることで守られる一方、受けた傷が別の関係で繰り返されることがあります。
きっかけ
逃げにくい力関係の中で、攻撃される側にいることが危険になる
起こる反応
攻撃者の話し方や基準を取り込み、別の人や自分へ向ける
その場の安心
強い側に近づいた感覚が生まれ、無力感が下がる
続いた時の負担
受けた傷が繰り返され、他者や自分を同じ方法で傷つけることがある
攻撃者との同一化が現れやすい場面
行動だけで決めつけず、その前にどんな痛みや脅威があったかを一緒に見ます。
厳しく育てられた人が自分にも同じ言葉を使う
いじめられた後に別の人をからかう
威圧的な上司の態度を部下へ繰り返す
「誰から学んだやり方か」を分ける
攻撃的な行動を正当化せず、その言い方やルールを最初に使っていた人、使われた時の自分の反応を確認します。
強さを失わず、威圧、侮辱、支配だけを手放せる別の方法を考えます。境界線を示すことと相手を傷つけることは同じではありません。
仕事の中で、この反応が起きる時
「自分も耐えたのだから」という指導が、職場の世代を越えて繰り返されることがあります。厳しさの必要性と、人格攻撃や過重労働を分けます。
本人だけの問題にせず、記録、第三者、指導ルール、組織の安全管理を使い、再現しにくい仕組みへ変えます。
受けたことと行ったことを分ける
背景を理解しても、他者への影響まで正当化はしません。
第三の対応を作る
服従か攻撃か以外に、記録、相談、境界線を使います。
その反応を奪わず、別の守り方を足す。
急に手放そうとすると、元のつらさだけが残ります。まず選択肢を一つ増やします。
弱さを恥にしない
傷ついた反応は危険への自然な反応でもあります。
力の使い方を選び直す
相手を抑える力ではなく、守る・断る力へ変えます。
安全な関係で学び直す
威圧せずに意見を伝えられる関係を経験します。
医療機関へ相談する目安
防衛機制そのものを治療するのではなく、生活への影響や背景にある症状を確認します。
- 傷つけられた場面を別の相手へ繰り返してしまう
- 支配・服従以外の関わり方が難しい
傷ついた経験を理解しながら、同じ方法を次へ渡さない
攻撃者に似た部分へ気づくと、強い罪悪感が出るかもしれません。しかし、反応の由来を知ることは、自分を攻撃者と同じ人間だと決めることではありません。
行動の責任を引き受けつつ、弱い側へ戻らなくても使える強さを増やす。それが連鎖を止める方法になります。
REFERENCES参考文献・執筆上の注意表示する
防衛機制に関する総説・評価研究をもとに、患者さん向けに整理しています。
- Defense mechanisms: 40 years of empirical researchJ Pers Assess, 2015 / PMID: 25157632↗
- The Hierarchy of Defense Mechanisms: Assessing Defensive Functioning With the DMRS-QFront Psychol, 2021 / PMID: 34721167↗
- Involuntary coping mechanisms: a psychodynamic perspectiveDialogues Clin Neurosci, 2011 / PMID: 22034454↗
研究上の分類は複数あり、同じ反応の意味も状況によって異なります。このページだけで診断することはできません。
