神戸三宮の心療内科・精神科仕事とこころのクリニック
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KOKORO NO SHIKUMI 03

気持ちを切り替えられないとき

こころの仕組み

こころの仕組み03

嫌なことがあった。

相手に言われた言葉が引っかかる。理不尽だった。言い返せなかった。自分にも悪いところがあったかもしれない。

帰り道でも考える。家に帰っても考える。お風呂でも思い出す。寝る前にも、「あの時こう言えばよかった」と頭の中で会話を続けている。

周囲からは、「もう終わったことなんだから、切り替えた方がいいよ」と言われる。自分でもそう思う。でも、できない。

こういう時、「自分は気持ちの切り替えが下手なんだ」と責めたくなるかもしれません。

しかし、少し違う見方もできます。

頭の中では、その問題がまだ「未処理」として残っているのかもしれません。

答えが出ないと、頭は考え続ける

人は、何か嫌なことが起きると考えます。

「どうしてあんなことを言われたんだろう」
「自分は何が悪かったんだろう」
「次に同じことが起きたらどうしよう」

これは本来、問題を解決するための働きです。考えて原因を見つけ、必要な対応を決め、次に備える。そこまでできれば、本来は終了できます。

しかし、対人関係ではきれいな答えが出ないことがあります。相手の本心は分からない。謝ってもらえない。何が正しかったのか決められない。相手が変わる保証もない。

すると頭は、「まだ答えが出ていない。だから、もう少し考えよう」と判断し、何度も同じ場面を再生します。

考えていることと、問題を解決していることは違う

最初の10分は、新しいことを考えていたかもしれません。

しかし1時間後も、同じ言葉を思い出し、同じ怒りを感じ、同じ結論に戻っているだけなら、そこではもう新しい問題解決はあまり起きていません。

問題解決ではなく「再放送」になっていないかを確認します。

考えること自体が悪いのではありません。新しい情報が増えているか、今できる行動が見つかっているかが、一つの目安になります。

「すっきりしてから終わる」をやめる

私たちは無意識に、次のような流れを期待します。

考える。納得する。気持ちが落ち着く。そして終わる。

しかし、相手が謝らない、理由も分からない、理不尽さも残っている時に、「納得」を終了条件にすると、いつまでも終われません。

そこで、終了条件を「今日できる対応がなくなったら、いったん終わり」へ変えます。

  1. 今日できる対応を一つ決める上司へ相談するなら要点をメモする、メールが必要なら下書きを作る、明日確認するなら予定へ入れます。そこまで終われば「今日の分はここまで」です。
  2. 新しい情報があるか確認するまた考え始めた時に、「新しい情報は増えたか」「今できる新しい行動はあるか」を確認します。両方なければ、再放送が始まったと気づきます。
  3. 問題を頭の外へ置く「何が起きたか」「明日すること」「次に考える時間」を短く書きます。書いてあるから、今は頭の中で持ち続けなくてよい状態を作ります。
  4. 気持ちではなく、注意の行き先を変える気持ちが完全に落ち着くのを待たず、散歩、料理、入浴、片付けなど、別の行動へ注意を使います。

「考えないようにする」ほど戻ってくることがある

「考えないようにしよう」とすると、逆にそのことを意識してしまう場合があります。

そのため、考えを力ずくで消すのではなく、「また再放送が始まっている」と名前をつけ、別の行動へ注意を戻す方が現実的です。

身体が興奮している時は、考える前に休ませる

怒りや不安がかなり強い時は、考え方を変えるより先に身体を落ち着かせた方がよいことがあります。

心拍が上がっている。身体が熱い。肩に力が入っている。呼吸が浅い。

こういう状態で「別の見方をしよう」と思っても難しいものです。少し歩く、水分を取る、息をゆっくり吐く、入浴する、眠るなど、まず身体の興奮を下げます。

考える力は、身体の余力が戻ってからの方が使いやすくなります。

切り替えられない時、何を守ろうとしているのか

それでも何度も同じ考えへ戻る時は、もう少し深い理由があるかもしれません。

「なぜあの人はあんなことをしたんだろう」と考え続けている人は、次は傷つかないように、相手を完全に理解しておきたいのかもしれません。

「無能だと思われていないかな」と何度も考える人は、傷ついた自己評価を元へ戻したいのかもしれません。

つまり、切り替えられないのは意志が弱いからではなく、まだ何かを守ろうとしているからということがあります。

しかし、人の気持ちを完全に理解することも、二度と傷つかない保証を作ることも、自分の評価を100%確かめることもできません。そこまでを終了条件にすると、考える仕事には終わりがなくなります。

気持ちが残っていても、生活へ戻っていい

気持ちを切り替えるというのは、「もう気にしません」と思えることではありません。

腹が立ったままでもよい。悲しいままでもよい。納得できなくてもよい。

そのうえで、「今できることは終わった。だから、今日はここまでにする」と区切ります。気持ちは、少し遅れてついてくることがあります。

「切り替えられる人」は、嫌なことをすぐ忘れられる人ではなく、気持ちが残っていても自分の生活へ戻れる人なのかもしれません。

すっきりしてから終わるのではなく、すっきりしていなくても、いったん終えていい。

一人で考え続けることがつらくなったら

嫌な出来事を何度も思い返し、睡眠や仕事、食事、家事に影響している場合は、一人で解決しようとせずご相談ください。

  • 寝る前も考え続け、眠れない
  • 仕事中もその場面が浮かび、集中できない
  • 怒りや不安で動悸、吐き気、涙が出る
  • 自分を責め続けてしまう
  • 気分の落ち込みや意欲低下が続いている
  • 「消えたい」「いなくなりたい」と感じることがある

反すうは、うつ病や不安症だけにみられるものではありません。出来事の内容、続いている期間、生活への影響を含めて整理することが大切です。

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参考文献

  1. Spinhoven P, et al. The effects of cognitive-behavior therapy for depression on repetitive negative thinking: A meta-analysis. Behav Res Ther. 2018;106:71-85. PubMed
  2. Wang DA, Hagger MS, Chatzisarantis NLD. Ironic Effects of Thought Suppression: A Meta-Analysis. Perspect Psychol Sci. 2020;15(3):778-793. PubMed
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